開催日:2018年1月20日(土)10:00~16:00
会場:パブリカス(大伝馬町)
撮影:丸尾隆一
授業内容
2018年最初の活動日は、午前に学習と実験の時間を設け、午後は一人20分の時間を使ってじっくり「Action」の進捗についてプレゼンテーションする時間を設けました。
この日の学習と実験のテーマは「お金」。まずは自らの金銭感覚を可視化する「実験」からスタートしました。
[実験]自分の価値観を知る
授業冒頭でファシリテーターの菊池より「いま、自分のお財布のなかにいくら(何円)入っているか分かりますか?」とメンバーに問いかけたところ、メンバーのうち7割くらいの人が手を上げました。そして実際に財布の中に入っている金額を確認してもらったところ、挙手したメンバーのほとんどが予想額と実際額の誤差が2000円以内という結果に。日頃家計の管理をしているメンバーほど、「いまいくら(何円)持っているか」という部分には敏感なようです。
次に「自分が身につけているもの、持ち歩いているもの金額を換算する」実験をおこないました。用意したシートに自分の身につている洋服やアクセサリー、そしてカバンの中身をできるだけ詳細に書き出し、その総合計を計算します。
メンバーの一人は、予想以上に洋服、持ち物が家族からのプレゼントで構成されていることに気づき、改めて家族の大切さを実感する一幕も。そしてこの書き出したリストを使って、持ち物リストのなかでどうしても手放せないものは何か、そしてそれを手放さなくてはいけなくなったら、いくらなら手放せる?をテーマにディスカッション。
人によって手放せないものは様々ですが、「結婚指輪は絶対に手放したくないけど、どうしてもといわれて6千万円くらい値段がつくのなら手放してしまうかも。手放すことに対してパートナーへの罪悪感はあるが、6千万円貰えるならパートナーも一緒に喜んでくれそう」と話すメンバーもいました。「自分にとって本当に価値があると思えるもの」が何なのか、それは物以上に大切な誰かの感情なのかもしれない、ということに気づくきっかけとなる実験でした。
その後は「お金」にまつわるアートの事例を紹介する[学習]の時間に。
赤瀬川原平の「千円札裁判」から始まり、紙幣や貨幣そのものをアートの材料とすることへの是非や、アート作品を通して資本主義に疑問を投げかけるような作品の事例を紹介し、「お金」という身近な道具が持つメッセージについて考える時間を持ちました。
[実践]Action企画のブラッシュアップ
午後はActionのプレゼンテーションの時間。昨年12月の時点では、まだまだプランが固まらないでいたメンバーも多くいましたが、今回はワークショップシートを用意するなどメンバーそれぞれに準備万端でプレゼンテーションに挑みました。
「名前」をキーワードにしたワークショップを自らのActionにすることを予定しているメンバーは、ワークショップの際に使う「質問」をメンバーと一緒に考えられるようにシートを用意してきました。この日集められた「質問」、そしてこのActionについては、メンバー自身がActionページにつづっていますので、ぜひそちらをご覧ください。
これまでなかなかActionを自分に引き付けられず、12月の活動日では即興演劇でプレゼンテーションの時間を乗り切ったメンバーは、芸名を持つダンサーという「演者」である自分自身と、本名で一個人としてRelight Committeeに参加した自身とに明確に線を引くことを宣言し、そのうえでたどり着いた「Action」プラン。先月まで自分の奥底にあるものを掘り下げきれずに、もやもやとした思いを抱えた様子だったのが一変、いくつものプランが自分の中にあふれてきたことを伝え、そのうちの一つを実際にメンバーとともに実験してみました。
試してみたのは、くじを引いて出た「父」「母」「姉」「妹」「兄」「弟」の役割に合わせ、疑似家族として家族写真を撮ってみるワークショップ。まだまだプランは粗削りなだけに、今後ブラッシュアップされていくのが楽しみです。
その他のメンバーは、コンセプトは確固なものになる一方「では実際に何をするのか?」までたどり着けずに悩んでいる様子が濃くなってきました。しかしRelight Committeeの受講生でいられる期間もあとわずか。ひとつのマイルストーンである3月のRelight Daysも近づき、そろそろ実行プランを固めなければいけません。
決意のもとにある晴れ晴れとした表情と、迷いと焦りによって曇る表情のコントラストがはっきりとした一日でした。
現在、このWEBサイトのActionのページにて、メンバーそれぞれが自分のActionの報告や、Actionに至るまでの思考の軌跡を公開しています。今後徐々に公開ページが増えていく予定ですので、ぜひご覧ください。
今回のレポートは、当日OGとして授業をサポートしてくれたRelight Committee 2016の高木萌子が執筆します。
メンバーの変化・Relight Committee という場の変化
今回、Relight Committee2017のOBとして、初めて2018の活動に参加しました。年齢幅は多様で、去年より女性が若干多いかなと感じたものの、クラス全体の雰囲気は、去年と似ているものを感じたのが印象的でした。それは発表したメンバーが、去年のメンバーも経験したActionプランを作る上で通る難関と向き合い、焦りや熱気に満ちた空気感を共感することができたからかもしれません。
Relight Committee2017と2018に与えられたテーマには若干の違いはあるものの、2017のメンバー同士で、与えられた「生と死」というテーマについて議論し、またそのテーマに自分たちのやりたいことをどう結びつけたらよいのかと迷走していたことを思い出しました。今思えば、与えられたテーマから考えるのではなく、もっと自分の中にある本当に「やりたい」と感じることだけに焦点を絞るべきだったと思います。
各発表の中で、特に私の記憶に残ったのは、荒川真由子さんの発表でした。それは、彼女のActionへの迷いや自分に対する考え方が自分と重なったからだと思います。
発表の中で、彼女は自分のことを頑固者だと前置きした上で、今回のActionへ向けて、たくさんの本を読んだと話し、書籍の紹介をしてくれました。私も同じように、自分らしいアクションを見つけるためにたくさんの本を読んだので、アクションへ向けたアプローチが似ているなぁと感じました。読書家でもない私は、私なりに一生懸命に本を読んでいたと思います。だけど、やりたいActionがわからないままに読む書物は、自ら森の中に迷いこむような感覚で、全ての内容や引用にまで重要な意味をもつように思えて、結局書籍からは何も答えは見つけられませんでした。
彼女の発表テーマは、まじないに関することでしたが、議論はいつの間にか発展し、自分だけの願掛け?(自己暗示のようなおまじない)の話になっていました。彼女の口からふと「普段の生活の中では、靴をピカピカに磨くのが好きなんです」という話がでました。その後の議論は、もっぱら靴磨きに関する質問になったのがとても印象的でした。私は、その時彼女の発表をそばで聞いていて、「靴磨き」の話をした瞬間、彼女の顔が一瞬輝いたように見えました。
人が好きなことや想いのある言葉を発したとき、表情や声のトーンといった微妙な変化が重なって、周りの人に何かを感じさせるのだと確信した瞬間でした。
Relight Committee OB・OGの視点から
全てのRelight Committee 2017メンバーの発表を聞き終えて、どの発表もいい意味で迷いがあり、実施までの残りの2ヶ月間で、より洗練されたActionになる可能性を感じました。上記で触れた荒川さんの発表の中で感じた輝きだけでなく、どの発表の中にも、キラっと輝く瞬間はあったと感じました。
発表した本人が、人から受けた様々なフィードバックを素直に受け止めることは、至難の業かもしれません。でも他の人が自分の中から見つけてくれた輝きを手がかりに、一歩踏み出してみることで得られる自分なりの納得感は、必ずあると信じています。
このRelight Committeeのメンバーと共に学んだからこそ知ることができた自分を、大切にしてみてください。
第7回を終えて
去年、私は「あなたらしい企画ではない」とのフィードバックをメンバーから受け、最終的なActionプランを作り上げることができませんでした。当時の私は「アートに正解があるのだろうか?自分の企画なのに、主体性がないというフィードバックそのものの意味がわからない。生と死というテーマは、社会彫刻家と関係があるの?」と素直に他メンバーからのフィードバックを自分の中に取り込むことができませんでした。でも、そんな私の発表の中にも、きっと今回の「靴磨き」に匹敵する輝きがあったのではないかと、荒川さんの発表を聞いていて感じたのです。
昨年の高木萌子のプレゼンテーションの様子
私の発表の中で、アメリカで難民を対象とした英語教師をしていたことを話したことがありました。その後、すかさず「難民への語学教育に関するテーマはどうだろうか」とフィードバックを受けたことを思い返すと、きっとそこに私の輝きがあったのでしょう。でもそのときは、素直に受け止めることができなかった自分がいました。
今回のRelight Committeeの発表を通じて、改めて「Art in you」という宮島達男さんから教わった言葉を思い返しました。自分の中にある志向や直感は、素直にならなければ感じられない。周りの人だから感じられるその「輝き」こそ、もしかしたらあなた/自分の中にある「Art」の原石なのかもしれない。また新たな学びとなったように思います。
レポート:高木萌子(Relight Committee 2016 )
撮影:丸尾隆一