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Relight Committee 2017 第1回授業レポート

開催日:2017年7月29日(土)10:00~16:00
会場:アーツ千代田3331 アーツカウンシル東京ROOM302
撮影:冨田了平、中田一会

 

授業内容


Relight Committee2017第1回目の活動日は、はじめにラジオ体操をして体を目覚めさせ、運営側の紹介と受講生それぞれの簡単な自己紹介、そしてRelight Projectが立ち上がるまでの経緯や、Relight Committeeが学習・実験・実践を通して社会彫刻家を育成していくことを改めて説明することから始まりました。

午前:他己紹介

午前中のメインのプログラムとなった「他己紹介」は、2人一組になってペアの相手を1分間で紹介するワークショップです。最初の20分でお互いに自分自身のことを話し、次の10分でその話をまとめ、最後にカメラの前で1分間の発表をおこなうこのワークショップでは、短い時間の中で自分自身のことを的確に伝えなければならないため、「自分は何者なのか」を改めて考え言葉にする必要があります。また最後にペアの相手が発表する他己紹介を聞くことによって他者から見た自分を知ることができます。初回では自己と他者の2つの視点によって、これから社会彫刻家としてアクションを起こしていく自分自身を見つめることを目的としてこのワークショップをおこないました。

当日発表された他己紹介はこちらにて公開中です。
http://relight-project.org/report/relight-committee-2017-other-his-own-introduction/

午後:社会彫刻家トーク

午後は「社会彫刻家」の実践を学ぶためのトークゲストとして、アーティストの宮島達男さんをお迎えしました。宮島さんは、東日本大震災を契機に消灯を続け、Relight Projectが年に一度三日間だけ再点灯をおこなうパブリックアート《Counter Void》(参考URL:http://relight-project.org/about/about-counter-void/)の作者であり、同時にRelight Projectのメンバーでもあります。Relight Projectのみならず、2017年に発表した《時の海ー東北ー》においても、東日本大震災への鎮魂の想いや大災害の記憶を残すために今後10年がかりの制作を進めるなど、常にアートを媒介として社会へ向けたアクションを起こしている社会彫刻家です。

第1回目の活動日に宮島さんをお招きし、初期の作品やパフォーマンス活動を経てアートを通じて社会問題に向き合うようになるまでをお話しいただくことで、Relight Committeeが思い描く社会彫刻家とはどのような姿なのかを受講生と共有するとともに、社会へアクションを起こす際、アートを媒介することの意味や意義をともに考える時間となりました。

「戦争の反対はアートである」という考えを図解する宮島達男さん

今回のレポートは、Relight Committee2015受講生であり、現在はRelight Project事務局スタッフとして運営に関わっている、室内直美が担当します。

メンバーの変化・Relight Committeeという場の変化

宮島さんのトーク終盤、宮島さんの著書『芸術論』の中でも語られた「戦争の反対は芸術である」という言葉についてメンバーから質問が上がり、宮島さんには図解を交えながら掘り下げてお話していただきました。

「平和とは何も起こっていない静かな状態を指している、戦争が横軸においてマイナスの方向に引っ張っていくものだとしたら、平和はプラスの方向に位置するのではなく原点(ゼロ地点)にあるもの。それをプラスの方向に引っ張っていくのは、戦争の持つ『無理解』や『憎しみ』といった要素とは反対の『共感』や『相互理解』といった要素を持つアートなのではないか」

この話を受けて、宮島さんのプロジェクトの一つである「柿の木プロジェクト」(戦時下の長崎で被爆しながらも、奇跡的に残った一本の柿の木から生まれた苗木を「被爆柿の木2世」として世界各地に植樹し、柿の木をテーマとしたアート表現とともに育てていくプロジェクト。参考URL:http://kakitreeproject.com/)に長くかかわり、今回のReligt Committeeに参加したメンバーから「社会が戦争を起こす方向に行かないように、アートの側から引っ張るのが柿の木プロジェクトの役割ということをはっきりと認識できた」という感想が述べられました。

Relight Committeeには彼女のように何かしらアートにかかわりつつ、またかかわりたいと思いつつもどこかでその意味をつかみきれずにいるメンバーが多くいます。そうしたメンバー一人ひとりが、これからも少しずつアートにかかわる意味や、アートを媒介とする意義を見出していくのではないかと感じました。

「柿の木プロジェクト」への思いを語るメンバー

Relight Committee OB・OGの視点から

今年度のメンバーには、各々のアウトプットが盛んなことにも驚かされました。宮島さんのトークでの質疑や、その後に設けたフィードバックの時間にも活発に発言が飛び交ったことはもちろん、活動日の夜、Relight Committee2017メンバーが情報共有用に使っているクローズドのSNSには当日の感想を書き込んだり、自身のブログでRelight Committeeについて紹介したものをシェアしたりする投稿が続きました。

Relight Committeeの活動日は毎回情報量が多く、頭がヒートアップしてしまうような場面も多く見られます。筆者である私が受講生だった頃は、飲み込み切れなかった情報をすっきりしない思いのまま持ち帰ってしまい、そのまま日々忙しくしているうちにいつの間にかその思いが頭の隅に追いやられ、腑に落ちないままにそのトピックへの興味が薄れてしまった経験がありました。

Relight Committee2017の姿からは、興奮冷めやらぬままにその場で言葉にすること、うまくまとまらなくてもそれでも書き留めること、思考を頭の中だけにとどめておかず、とにかく言葉にしてアウトプットすることの大切さに私自身も改めて気づかされました。これから回を重ねるごとにさらに情報量は増え、一人で悶々と考える時間も増えてきます。そんな時、言葉や文字にして仲間とともに考えることを、これからもぜひ続けていってほしいと感じました。

第1回を終えて

他己紹介で丁寧に言葉を選びながらお互いのことを紹介するメンバーの姿を見た時、昨年度のどこか茶目っ気のある雰囲気だったメンバーたちに比べて、生真面目で大人しい印象を受けました。しかし宮島さんのトークの後に飛び交った鋭い質問やディスカッションにはメンバーそれぞれの自己主張の強さが表れており、まだまだこれからも新しい一面が表れてくることが予感されドキドキしてしまいました。

これまでの2年間も、Relight Committeeという場に集まったメンバーそれぞれはアートに関わることで新しい視点を得、アート的な思考力を養って社会や自らの生活へ変化をもたらしたいと思いながらも、どこかで「この場から何を学び取れるのか」「自分にどんなアクションが起こせるのか」という不安な気持ちも抱えていました。

アートに大きく期待しながらも、それをまだ信じ切れていないメンバーにとって「芸術はクリエイティビティや想像力を駆使することで人間の共感力を養っていき、それが社会を戦争とは反対の方向へ引っ張っていく」という宮島さんの言葉は、その迷いを良い方向へ導くきっかけになったように思います。

多くの意見が飛び交った宮島さんとの質疑応答の場面

レポート:室内直美(インビジブルアシスタント)
撮影:冨田了平、中田一会