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Relight committee第4回:社会彫刻家として対話する

Relight committee活動日、第4回目はこれまでのような座学ではなく、2017年3月に開催を控えた「Relight Days2017」のためのウォームアップがメインの回となりました。

午前は全員で「Relight Days2017」の概要についての確認と、Relight Committee2015のメンバー(以下、RC15)による自主企画として「Relight Days2016」を振り返る座談会でした。わたしたちRC15が「Relight Days2016」によってどんな経験を得たのか、そのときの心の動きや自身が感じた成長、ちょっとした失敗談などをRelight Committee2016のメンバー(以下、RC16)へ共有しました。

午後はRC16が「個人」となって、一つのアイデアを考える時間に。「生と死」という大きなテーマを前に、苦悶の表情を浮かべるメンバーも見られました。残りの5か月間、何を考え、どう動いていくべきなのか。この日から「Relight Days2017」へのストーリーが始まりました。テーマは同じでも、それぞれの表現や社会への働きかけは昨年度と違ったものになりそうです。

今回はそんな貴重な第一歩をレポートします。

ラジオ体操!

Relight Committeeの会場となっているアーツ千代田3331は、廃校となった中学校をリノベーションした施設です。わたしたちが活動に利用しているのは、その中のRoom302、元は音楽の教室だった場所です。しかし、Room302は今ではあまり音楽室の面影は残していません。教室の前方がわずかに1段高くなっており、少し「壇上」のように感じられるのが唯一の名残でしょうか。

そんな「学校」ともそうともつかない不思議な場所で、Relight Committeeの活動は行っています。今回はなんと、ブレインストーミング代わりのラジオ体操から始まりました!

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Relight Committeeの活動日は毎回週末の朝9時スタートです。ほとんどが社会人のRelight Committeeメンバーは、平日の疲れた体を引きずり、眠い目をこすりながら集合します。貴重な休日の朝、多くの人がいつもより少し寝過ごしたりしてゆったり過ごす時間帯に自らの意思で「学びの場」に集うという行動からも、Relight Committeeメンバーの向学心や成長への意欲が感じられます。

ラジオ体操は、真剣に取り組むと意外に体力を使うもの。しかも、この日はラジオ体操第一だけでなく第二まで行われました。全員、終わった後は息切れし、心なしか頬も紅潮。しかし不思議と笑みがこぼれるような雰囲気の中、今回のプログラムは始まりました。

まずは前回と同じように、Relight Committeeが共有するInstagramアカウントのチェックからスタート。このレポートをお読みの皆さんは、Relight CommitteeのInstagramアカウントはフォローしていますか?

このアカウントには、Relight Committeeが日々の生活の中で「アートだなと感じた瞬間」「心を動かされた何か」を撮影し、投稿しています。メンバーが日々何に注目し、何に心を動かされているのかが垣間見れるアカウントです。ぜひのぞいてみてくださいね。ちなみにわたしが投稿した写真はこちら。

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道端に残された「記憶」に心惹かれることが多いようです。そうした、それぞれが日常で惹かれたものや気づきを得たものを、メンバーやアカウントをフォローしている人たちに共有するためのアカウントなのです。

Relight Days2017にむけて

続いて、事務局であるインビジブル林さんより、これまでの活動を振り返りつつ、来年3月に控えた「Relight Days2017」までのスケジュールについて説明がありました。

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10月に入り、来年3月のRelight Daysまでに残された時間は半年を切っています。始まって間もないように思えるRC16らも、自ら頭を悩ませ、手足を動かす段階に入ろうとしています。

2016年3月12日、RC15が企画し運営した「Relight Days2016」は、企画段階において「生と死を考えるきっかけになること」「2時間の時間を演出するプログラムであること」「≪Counter Void≫前・付近で開催すること」の3つの条件がありました。

「Relight Days2017」では、テーマは同じ「生と死を考えるきっかけとなること」としながらも、「企画の発表方法、場所、対象の設定は自由」さらに「作品をつくって発表する」「展覧会を企画する」「トークイベントを行う」「ZINE(小冊子)を発行する」「期間中に実現が難しそうな企画なら、企画書や構想を発表する」など、制限はほとんどなくなりました。

昨年RC15が企画したものの中には、設けられた条件によって実現がかなわなかったものがありました。しかし、ある程度制限があったからこそ導き出せたものがあったことも事実です。

特に「2時間の枠を演出するプログラムであること」と「≪Counter Void≫前・付近で行うこと」は、構想段階で企画の枝葉がどんどん広がり収拾がつかなくなりそうなときの明確な判断指針となってくれました。

今回の設定では、自由度が上がった分メンバー自身の頭を悩ませる部分が大幅に増えていくのではないかという懸念もあります。準備段階、そして企画当日は、前回よりもエキサイティングな日々になる予感が強くします。

午後に一度企画の案出しをする時間を設けることを予告し、一度会場を転換。

Relight Days2016と向き合う座談会

ここからは、司会をわたしにバトンタッチしていただき、RC16に向けて「RC15にとって、Relight Daysとはなんだったのか」を振り返る座談会へと移りました。

この座談会は、わたしから提案して今回のプログラムに組み込んでもらったパートです。RC15が「Relight Days2016」を振り返りながら、その活動の過程を言語化することが目的です。また、わたしたちがどのような思考のプロセスや試行錯誤を経て「Relight Days2016」をつくり上げたのか、その軌跡をRC16へ伝えるためでもありました。

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登壇者は、わたしと今回のRelight Committeeに出席していたRC15の宍甘さん、橋本さん、山上さんの4名。事前にわたしは5つの質問を設定しました。

どうして今年度もRelight Committeeに参加を続けようと思ったのか?
Relight Projectに対する家族や友達の反応は?
Relight Daysまでの一週間をどのように過ごしたのか?
Relight Daysを振り返って、3日間は自分にとってどんな時間だったか?
昨年度の活動の中で、自分自身に変化はあったか?
これらを軸に、自分にとってRelight Daysはどんな時間だったか、「社会彫刻家」である自身として何を感じたのかをディスカッションしました。

Relight Daysから半年以上の時間が過ぎ、RC15にとっては初めてRelight Daysについて人前で話す機会でした。ディスカッションを進めながら、これまでなかなか言葉にできなかったRelight Daysの3日間をここまで言語化できたことに、わたしたち自身が驚いた座談会となりました。

思考の時間

午後の部は、もう一度「Relight Days2017」について話が戻りました。インビジブルの菊池さんから「Relight Days2017でわたしたちは何を表現するのか?」などのコンセプトについて解説。今回、前回以上に大切にしなくてはいけないのは、メンバーそれぞれが「社会彫刻家」であるという自覚。それぞれが「生と死」に対して、自分自身の立ち位置・意思・思想を明確にしたアウトプットをすることに重きを置かなくてはいけません。

再度ポイントを確認した後は、1時間強の時間を設けて「個人の」アイデアを考える時間に。

Room302のなかにある図書資料を活用するのはもちろん、気分転換に外を歩いてみたり、近場でフィールドワークをしたりなど、時間の使い方はそれぞれにゆだねられました。一人で机に向かい筆を走らせる者、林さんや宏子さんへ相談しながら、自分の得意分野でできることはないかを考える者など、時間の使い方はさまざまです。

この場では、一度Relight Daysを体験しているRC15が、RC16の思考が立ち止まってしまわないようフォローに入ります。橋本さんと宍甘さんは「実際に現場に立ってみるのが一番」と、数名のメンバーを引き連れて六本木の≪Counter Void≫へと出かけていきました。

わたしは、アートプロジェクトの成果物の資料をあたるメンバーに対して、「生と死」をテーマにしているアートプロジェクトを紹介したり、「生と死」「社会彫刻」と隣接するようなテーマに触れている成果物を紹介したりしました。

何かについて深く考えるとき、自らの立ち位置が明確でない時点で資料にあたったり他者と対話をしたりすることは、ともすると個人の思想や思考に影響を及ぼしてしまうこともあります。しかし、RC16との対話のなかでそういった迷いや揺らぎは感じられませんでした。

RC16の言葉の端々や資料に手を伸ばす際の覚悟のある表情には、外に何か情報を求めているのではなく、自らの内に抱える「生と死」に対する考えを削り出すための道具探しといった印象を受けました。

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「生と死」について、発想の起点を必ず「自分自身」から始めるという前提があるため、RC15はRC16らの芽生えた自覚やアイデアをつぶすことのないよう、発想の起点をぶらさないように、慎重に言葉を選んで対話しました。

また、Relight Daysへのタイムリミットが明確となったことで、「自分は“社会彫刻家”として何を表現できるのか」を真剣に考え始めるきっかけとなりました。RC16のそれぞれも、自分自身が「つくる人」であるということ、そして社会の中で実践することによって「社会彫刻家」となりうることへの自覚が芽生え始めたように感じました。

RC16からの問いかけも、企画の運営やアイデアのヒントを求めるのではなく、自らがもつ「生と死」への思想について他者と何を共有できるのか、できないのか。相手の思想や思考を丁寧になぞるような問いかけでした。

Relight Daysの経験者とそうでない者であっても先輩・後輩のような関係ではなく、お互いを「社会彫刻家」として尊重し合った対話が行われているように感じた時間でした。

今日のアイディアと宿題

≪Counter Void≫へ視察しに出かけていたメンバーも息を切らしながら戻ってきて、今一度全員がRoom302に集合。それぞれ、この1時間で考えたアイデアを共有しました。

自身の専門領域から派生させ、「人生における“出会い”を演出してみたい。マッチングアプリを開発してみるのも面白そう」と発表してくれたメンバーに対して、宏子さんから「アプリケーション(application)の本来の意味も踏まえて発展させるのも良いかもね」とコメントが入ります。わたしたちが普段、スマホやPC用語で何気なく使っている「アプリ」=「アプリケーション」という言葉には、本来「応用する」「適応させる」といった意味があります。アイデアにちりばめられたキーワードを注意深く掘り下げると、その手法を用いて本当に表現したかったことはなんなのかが、少しずつ研ぎ澄まされていくように感じました。

「生」について思考を巡らせたメンバーは「細胞とDNAこそが“生”なのではないかと考えた。運命と意思、そして生と死。それらを深掘りし、発展させてみたい」と発表してくれました。わたしたちの身体を構成している一つひとつの細胞。その細胞によって生かされているわたしたち。わたしたちの「生」は自らの意思なのか。それとも細胞の働きによって運命づけられているものなのか。考えれば考えるだけわからなくなってしまいそうな深いテーマでした。

このアイデアには「人間とチンパンジーの遺伝子の違いはわずか1%らしい。その1%の違いはいったい何なんだろう?」とのコメントが入ります。さらにいえば、人間とバナナの遺伝子も約50%が一致するそう。わたしたちをわたしたちたらしめているものは一体なんなのか。「生と死」を考えるとともに、一般論には落とし込めない「自分とはなにか」とも向き合うことのできるテーマとなりそうです。

ほかにも、出身が宮城県であることから、震災の記憶や被災者を悼む気持ちと向き合うことをテーマにしたいと発表してくれたメンバーもいました。自らの専門領域を生かしたアイデア、小さな疑問を膨らませたアイデア、過去や記憶を見つめ直すことから生まれるアイデアなど、「発想の起点は必ず個人から」としたことで、個人の思考に密接した多様なアイデアと出会えた時間でした。

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最後に、次回までの「宿題」が発表されます。Relight Committeeでは、思考を継続させるための宿題がこれまでほぼ毎回課されています。今回の宿題は「企画を一案考え、共有できる形(企画書など)にしてくること」。宿題もブレインストーミングの一環のため、実現ベースではなくひとまず「形にすること」の練習です。刻一刻とRelight Daysへのカウントダウンが進む中、一歩でも前進し、準備を進めていく必要があります。

思えば、わたしたちRC15がReligth Daysについて考え始め、同じように企画案を練り始めたのもちょうど去年のこの時期でした。わたしたちは、限られた時間の中で目前に迫るRelight Daysを無事成功させようと、がむしゃらに走り抜けていった気もします。今回の活動日を見ていると、RC15にも今日のような対話の時間がもっと必要だったように思えました。

アウトプットの形式が自由になった今年度、RC16は自分の立ち位置を見つめ、思考の海に深く潜り込むことが求められています。その中で、RC15はRC16に対しどのように手助けができるのか。「社会彫刻家」としてRelight Projectを通して何ができるのか、あらためて考える機会となりました。

昨年度より深く、多様なテーマが構成できそうな今年度のRelight Days。次回の活動日にどんな企画が発表されるのか、楽しみです。

レポート執筆:室内直美(Relight Committee2015)
写真:丸尾隆一