開催日:2017年12月16日(土)10:00~16:00
会場:アーツ千代田3331 アーツカウンシル東京 ROOM302
撮影:丸尾隆一
授業内容
Relight Committee 第6回は、メンバーが先月よりブラッシュアップしたActionプランの発表から始まりました。
出席した8人それぞれの熱いプレゼンテーションに対し、ファシリテーター陣、そしてほかのメンバーからのフィードバックも徐々に熱を帯び、活気ある時間が続きました
午後は、翌日に開催したRelight Symposium 2017 のゲストの1人であるジェイソン・シューバック氏を招き、「学びの場」を一つの切り口としながら、米国における芸術・文化教育の現場が持つ課題や、クリエイティブ・プレイスメイキングの事例などについてお話しいただきました。
[実践]Actionプラン発表
前回は一人5分程度の短い時間でメンバーそれぞれがActionプランを紹介しましたが、今回は一人15分の時間をかけて紹介しました。
メンバーそれぞれとは前回の活動日から1ヵ月の間、ファシリテーターである菊池、林との個人面談を設けました。
前回の時点では、なんとなくプランが見えているメンバーもいればそうではないメンバーもいました。手探りの状態ながらも何とかアイデアを絞り出してきたメンバーに対しては、ファシリテーターから「それは個人の経験に由来するものなのか?」「そう考えるようになったきっかけは?」など質問を投げかけて深堀していくこと、そしてファシリテーターが豊富に持つ、アートやソーシャルプロジェクトの事例を共有することでメンバーそれぞれのアイデアの種を膨らませてきました。
スライドを使ったプレゼンテーションやワークショップシートを用いての意見収集をするメンバーもいる中、具体的なアクションがいまだ浮かばずなにも用意してこれなかったメンバーは、だからこそ「今できること」に注力した即興ダンスの披露など、それぞれに表現方法は違えど、内側にふつふつと湧き上がり、しかしまだ表出させられない熱いうねりの温度が伝わってくるような時間でした。
[学習]ジェイソン・シューバック氏トーク
午後は米国での「クリエイティブ・プレイスメイキング」の第一人者であるジェイソン・シューバック氏をお招きしたトークセッション。トークの前に、まずはメンバーそれぞれが英語で自己紹介をしました。
海外留学経験や、在住経験のあるメンバーが多い今年ですが、流ちょうな英語を聞くと改めてメンバー個人の持つ能力の高さに驚かされます。もちろん中には普段英語を使い慣れないメンバーもいますが、すらすらと自己紹介をするメンバーに触発され、翻訳サイトを駆使しながら自分の活動、何を考えてこの場にいるのかなどを懸命に伝えようとする姿が見て取れ、Relight Committeeが順調に「学び合い」の場になっていることを実感しました。
ゲストのジェイソン氏は、アメリカにおいて「アートが触媒となる社会づくり」である「クリエイティブ・プレイスメイキング」の第一人者です。現在はアリゾナ州立ヘルべガ―デザイン&アート大学のディレクターを務めるほか、幅広い形で文化芸術携わり、コミュニティづくりにおけるアートやデザインについても多数執筆されています。
ジェイソン氏からは、クリエイティブ・プレイスメイキングは「社会彫刻」と同じような意味を持ち、個人がそれぞれの専門知を持つ中でそれらを生かして横断的にかけ合わせることで社会へ影響をもたらしていくという運動であるということや、「社会彫刻」という概念をいきなりアートの文脈を知らない人に投げかけてもその意義が伝わらないのと同じように、アート的概念を通じた総合的・横断的な働きかけの手法を「クリエイティブ・プレイスメーキング」という造語を使うことによって、その距離感を縮めてきているといったこれまでの経験などを交えながら説明いただきました。
市民、行政組織、専門家などを横断的にかけ合わせ、アーティストの役割を社会の中で拡張する方法を考え、それを実現する仕掛けづくりをしていくことがクリエイティブ・プレイスメイキングの重要な要素であることを知るとともに、それを実践するのもまた社会彫刻家としてのActionになることを気づかされるトークとなりました。
今回のレポートは、当日授業をサポートしてくれたOBメンバーの山上祐介が執筆します。
(インビジブルアシスタント・室内直美)
メンバーの変化・Relight Committee という場の変化
前回の活動日にアーティスト二宮圭一さんをお招きしてから1ヶ月が経つ。私は、前回から1ヶ月経った今回のメンバーの表情を見て「何かが違う」と開始早々感じた。
この日は各自がAction企画について発表する日。緊張感があって当然かもしれないが、各メンバーの顔つきがピリッと違う。単に緊張しているだけでなく、人によってそれぞれ表情が異なる。モヤモヤを抱えた表情の人、イキイキとした表情の人、覚悟を決めた表情の人…
表情こそ違うがメンバーの姿を見て、彼らが海から帰って来たような手ごたえを感じた。希望と恐怖を併せ持ちつつ、人工的なプールではない大自然の海原に飛び込み、自分が行けるところの限界まで素潜りして来たと感じたのである。海に潜って来たことで、一皮剥けたことをメンバーの表情から汲み取ることが出来た。
前回と今回の活動日の間に、メンバーは各自のAction企画について菊池宏子さんと林曉甫さんと個別面談を行なっている。私はその個別面談に参加していないので何が行われていたのか詳細についてはわからない。
しかし私はメンバーが行なった発表を聞き、個別面談の時点から潜水がスタートしたことがわかった。個別面談の準備や面談後の軌道修正の間、自分自身の触れたくない部分を自ら顧み、思考を深めることで余計迷子になったという話しを聞くことが出来たからだ。
メンバーの1人は最初は苦しかったが他者の意見を聞くことで自分が今まで気づかなかったことを気づいたという話をした。この話を聞いて2年前の私自身を思い出した。
Relight Committeeに入ったばかりの頃、私は独りよがりで手探りしながら右往左往していた時期があった。その頃はプロジェクト内での自分の立ち位置がわからなく不安で苦しいときだったが、当時のメンバーが客観的に私のことを批評してくれたことでプロジェクト内での立ち位置がわかった。立ち位置がわかるとどうActionすればいいか、頭で考える前に自然と体が動いてしまう。
2年前の自分自身を照らし合わせつつメンバーの企画を聞き、もうこの領域まで辿り着いているのかと正直驚いた。
全体を通して気になるAction企画ばかりだが、内容については方向性が決まった段階で昨年度同様Actionページが公開されるのでお楽しみに。
Relight Committee OB・OGの視点から
RelightProjectに関わってから私自身3年目に入ったが、今回のAction企画を聞いて一つ気づいたことがある。それは、このAction企画はActionを求められReActionは求められないということだ。
作用・反作用の法則ではないが、ActionをするとReActionが発生する。そして仕事では一般的にReActionがゴールでActionは通過点でしかない場合が多い。しかしAction企画はReActionではなくActionそのものがゴールである。ReActionをなおざりにしているのではなく、Actionをゴールにすることでエネルギーを濃縮していると言えるだろう。
私自身、2015年度のメンバーたちと『Counter Void』を5年ぶりに再点灯させた時、生と死に対してどう向き合うか、どう行動するかばかり考えていた。この活動を社会からどう評価されるか、この活動で社会や地域をどう変えていくかという点については全くと言っていいほど考えていなかった。
昨年度は一歩引いた距離から2016年度のメンバーたちを見ていたが、その時とった彼らの行動も自らのActionばかり考え行動していた。各自のアクションプランを聞いて、今年度のメンバーもその傾向を良い面で引き継いでいることを感じた。
私自身、このRelight Committeeの活動で悩んだり迷ったりしたことがあったが、一つ言えることは自分の基準を絶対にぶらさない、迷ったら基準に戻り体勢を立て直すことがActionを自分のものにするポイントだということである。これは歴代のRelight Committeeを見てきて感じてきたことだ。
もちろん、自分の基準をぶらさないことは自分の意見を曲げないことではなく、状況に応じて他者の意見を吸収し自らを書き換えてくことも必要である。しかし場合によっては自分が意図しない状況に陥ってしまうときがあるかもしれない。
日常生活では世間一般のモノサシ(基準)を持ち、Relight Committeeの活動では自分自身のモノサシを大切にして、場面場面で物事を判断しながら突き進むことが出来るかが、社会彫刻家としての要になるのではないかと私は考える。
第6回を終えて
私は、設計者という仕事柄図面を描く。今は3D CAD(Computer-Aided Design)で3Dデータや図面データを作るのだが、最初は紙に手書きでラフ画(ポンチ絵)を描いて案を練り、他者と対話する。
検討に検討をしたところは書き直しが多いので汚くなり、さほど重要でなかったり既存の形状だったりするところはあまり書き直しをしないので綺麗である。
先日、仕事帰りに上野のガード下で飲んでいたとき、学校で彫刻を教えている方と初対面ながら話が盛り上がった。その人の話では、彫刻も最初は紙で下絵を描き検討に検討を重ねたところが汚くなるそうだ。
「あ、僕の仕事と似てますね」と意気投合し、名刺交換も特にせずその人と別れたのだが、Relight CommitteeのActionも紙に下絵を描くかは置いておいて、共通する点があるように感じた。
過程の部分を上手くしたり綺麗にしようと試みたりしても、大したアウトプットは出来ないような気がする。目的に向かっているときは、周りに笑われようがどう見られようがお構いなしに駆け抜けていった方が良いのかもしれない。その姿に周りの人は心を動かされ、当の本人が想像していない展開に発展するのではないだろうか。そんな出来事を私自身も経験したことがある。
この日の午後、翌日のRelight Symposium 2017で基調講演を行なうジェイソン・シューバック氏と会話する機会があったのだが、ジェイソン氏と英語で直接会話出来なかったのは私だけだった。
メンバーのAction企画を聞いたばかりだった私は、今まで過程の部分を上手くみせようとし失敗を恐れた結果英会話スキル習得の機会を逃していたことに、ここにきて改めて気づかされたのである。
レポート:山上祐介(Relight Committee 2015 )
撮影:丸尾隆一